慶應義塾大学東アジア研究所の現代韓国研究センター開所10周年の記念シンポジウムに行ってきました。
慰安婦問題や元徴用工問題、さらにはレーダー照射問題で日韓関係が悪化する中、「北東アジアの新しい秩序構想」をテーマに活発な議論が行われました。
「新しい日韓関係構築への課題」をテーマにした一番最後のセッションでは、高校2年の日本人女子生徒の質問に会場全体が胸を打たれました。ぜひ生の声をお聞きください。ICレコーダーで録音しましたが、文字も以下に起こしました。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
○×女子高校2年の○△と申します。
とても緊張していて、うまく話せるかどうか分からないのですけれども、
あの、今、すごく日本と韓国の関係が悪化しているというのを毎日ニュースとかで見てて、
私自身、すごく韓国の文化も好きだし、
私の友達にも在日韓国人の子もいたりして、そういう日韓が悪化するニュースで肩身の狭い思いをしているのも見てて、私も心がつらかったりするんですけど、
そういう私たちの世代はとても韓国の文化とかに興味がある子が多くて、
今の政治を担っている世代は、やっぱり韓国に対して、う〜ん、嫌な感情というか、こう、そういう感情があって、
韓国の今の政府の世代も、日本に対してあまり良い感情を持っていない世代というのを知って、
今の私たちがもし政治を担う世代になったら、どのように変わっていくのかなというのを、どのように変わっていくのかなというか、どのように変わるのかなというのを、予想でもいいのでお聞きしたいなと思います。
こんなに子どもたちにつらい思いをさせていて、大人たちはいったい何をしているのか。すごく考えさせられました。なお、音声を公開させていただくことは、この女子高生に許可を得ました。彼女はまだ若くて、ネトウヨどもへの免疫力もないでしょうから、匿名に致しております。
この質問に対し、「大人」を代表し、静岡県立大学の小針進教授が、50年間に800万人規模の青少年交流を行った独仏両国の取り組みを参考にして、「青少年交流をさらに強化すべき」との未来志向の考えを述べられておりました。
このほか、印象的だったのが、慶應大商学部に留学している韓国人留学生が「韓国のSNSに日本の立場を説明すれば『親日だ!』と批判される。日本のSNSで韓国の立場を説明すれば『在日だ!』などと批判される。どうしたらよいのでしょうか。双方の世論悪化で、悪循環になっている」と述べていたこと。
日本で言えば、韓国を専門にする日本人の学者や言論人は、状況を説明しようにも韓国の立場を述べただけで、「親韓だ!」などと言われてしまう。言論封じ込めでおかしいでしょ?言論の自由がなかった治安維持法真っ盛りの戦前の頃に戻したいのか。
ジャーナリストとして特に強く指摘しておかなければならないことは、今回の日韓のレーダー照射問題では、一部政治家とメディアが冷静さを欠き、怒りが沸点に達したかのごとく、日韓の対立を過度に煽ったこと。特に政治家は世論に迎合したり、ナショナリスティックなことを言ったりして人気取りに走りがちだ。愛国心は分かるが、政治家には世論の暴走を防ぐバランス感覚も絶対に必要だ。
この日のシンポジウムでも触れられていたが、国際政治の理論では、OECD(経済協力開発機構)加盟国といった民主主義の国同士は戦争をしない、との理論がある。戦争に走ろうとするとお互いの国内で、その戦争に突っ走る勢力をけん制する民主主義の機能が働くから。しかし、今の日韓の対立を見ていると、そんな機能も不全となり、メディアや政治家がSNSでの過激論調に便乗して、感情的に対立を煽ってきた感がする。
前述の女子高生をはじめ、若者を心配させないよう、僕ら大人たちはそうした「世論の暴走」を止めなければならない。少なくとも僕はジャーナリストとして、世論が暴走しないように厳しくチェックしていきたい。
タグ:日韓関係